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ブロガーで作家のはあちゅうさんが、初の小説集「通りすがりのあなた」を上梓しました。

ビジネス本は多数出版していますが、意外にも純文学は初めてとのこと。

 

「意外」という表現をしたのは、はあちゅうさんはこれまで、2歳の頃から作家になりたかったとか、高校生時代は文芸新人賞に投稿していたということを、たびたび述べていたからかもしれません。

 

10月3日、東京の講談社にて行われた新刊トークイベントでは、はあちゅうさん自ら作品を語り、そこには「夢を実現するための鍵」がたくさん散りばめられていました。

 

夢が叶っているようで、叶っていなかった

 

はあちゅうさんは女子大生の頃に大ヒットブログが書籍化したことで注目を集め、その後ビジネス本やエッセイを多数執筆しました。自分で立てた企画に大企業や著名人を巻き込んだり、コメンテーターや知識人としてテレビに出演したりもしています。

でも、子供の頃からの夢が実現していないことが、実は心に引っかかっていたそうです。

 

「どこかでずっと小説を書きたいなと思っていました。苦手なものから逃げるような、後ろめたさを感じていたんです」

 

高校生時代に思い描いていた夢を社会人になって実現させた人は、いったいどれくらいいるでしょうか? そう多くはいないでしょう。

次々に夢を叶えて、充実しているように見えるはあちゅうさんにも、叶っていない夢があったのです。

 

「よく、群像編集部からオファーされたんじゃないかって言われるんですけど、違うんです。自分で原稿を持ち込みして編集者さんに見ていただいて、今回やっと小説集の発売となりました」

 

予想に反して、第一歩は泥臭いものだったよう。受け身にならず、自分からアクションを起こすことで夢への扉が開いたのです。

 

念願の作家デビュー!

 

『通りすがりのあなた』に描かれているのは、固定の枠に当てはめるのが難しい人間関係。初めての小説集で、はあちゅうさんが書きたかったものとは一体何だったんでしょうか?

 

「今まで書いてきたビジネス本は、著者である私が最初から答えを出しているものなんですね。でも、小説は読者に問いかけを与えていて、明確な答えはないんです。自分がストレートに発言したら届かないような内容も、小説にすることで届くんじゃないかと思いました。

あと、小説を書き出して気付いたのは、小説ってなんだろう? ということ。こんなにも自分は小説を読んできたのにわからなくなって、小説ってなんだろうとすごく考えました。結局、ストーリーの始まりと終わりで何らかの動きがあること。主人公がちょっとでも前に進むこと。それが小説なのかなと」

 

本に描かれた曖昧な人たちの繋がりに触れることで、読者はそれぞれに答えを見つけるのかもしれません。

 

「……でも、そういうのって実は後付けで、小説を書いた後で、私はこういうことを書きたかったんだなと気付いたんですね。これを書きたい! と明確に思いながら書いていたわけではなくて、書いてみたらそういう小説ができあがったんです。

私の場合、インターネットのことを書いたほうが本を売りやすかったり、一番わかりやすかったりするだろうし、私も初めはインターネットをテーマにした小説を書いてみたいなと考えたんですが、いざ書いてみたら全然違うものが出てきて形にはなりませんでした。でも、その中には実は、自分がインターネットを使いながらずっと感じてきた感情が詰まっていたんです。

たとえば、私を上に見る人もいれば下に見る人もいて、自分は何も変わらないのに、環境が変わったり見る人が変わったりすると、自分というものが変わる。そういう苦しさも、小説には散りばめられています」

 

念願の小説を書くという作業を進めるなかで、はあちゅうさんは自分の新しい見せ方を知り、自分の意外な一面にも気付いたようです。

 

いつもとは違う自分

 

 

「カナウ」のインタビューで、はあちゅうさんは「強い自分を見せるほど落ちることがある。そういう部分を小説にしてみた」と語っていました。

 

「生身の私はつねにローテンションで、世の中を冷ややかに見ていると思うんですよ。ただ、発信するとなれば言葉は自分に返ってくるので、ビジネス本を書く時はちょっと強い自分になって書くんですね。冷ややかな自分からテンションを上げるんです。

でも、小説は素のテンションで書いています。普段ツイッターで私を見ている人が生身の私と実際に会うと、ローテンションなのでみんな驚くんですけど、誰でもそうだと思うんですよね。多重人格なところがあるんじゃないでしょうか。私の中にも世の中を変えたい部分と、ちょっと諦めている部分があって、それらの切り取り方がビジネス本やツイッターで発信する時と、小説を書く時とでは違うんだと思います」

 

収録されている『妖精がいた夜』では、失恋して落ち込む主人公と突然に自殺する先輩が描かれていますが、はあちゅうさんの本やインタビューでも、鬱についてたびたび触れています。それも生身のはあちゅうさんなのでしょうか?

 

「以前、ピースの又吉さんがテレビ番組で「自分は慢性的鬱」とおっしゃっていたのを聞いて、すごくよくわかる! と思ったんですけど、私も一人だけ冷めていたり、常に憂鬱な部分があって。そういうのがずっとコンプレックスで、でも変えられない部分でもあるんです。素の自分はちょっと鬱で、それが小説に出ているんだと思います。

……私は死にたいわけではなくて、消えたいと思うことがあります。そして、『妖精がいた夜』に書いたような感情を、誰でも抱えているのが普通だと思っていたんです。

でも、このあいだストレスについての討論番組に出たときに、自殺したいと思ったことがあるか? という問いかけに対して私はイエスと答えたんですけど、ノーと答えた人のほうが多くて。普通はそっちなんだ、と驚きましたね」

 

小説を書きながら気付いたこと

 

今回、本が書店に並ぶ前からオンラインサロンを開設し、本ができあがっていく過程をユーザーに見せてきました。その意図とは?

 

「本を書くだけじゃなく、ちゃんと売っていきたいと思って、オンラインサロンを開設しました。作者は何を考えて、どう本を作っているのかを泥臭く伝えたかったんです。

私は顔を出す作家として割り切ろうと思っていて。もともとブログの人というイメージが強いですし、小説を出したからといって顔を出さなくなるというのも変ですよね。他の文芸作家さんとは違う戦い方をしようと考えています。

 

今回、オンラインサロンを開設したのもそうですし、ずっと発信し続けて読者とつねに繋がって、本の発売を楽しみに待ってもらうという形を頑張って作ってきたんですね。こんなにも苦労して本を作っています、という部分が伝えられたかなと思っています。

 

今の時代、本を書いて涼しい顔をして売れるのを待つというのは、そぐわないんじゃないかなと感じます。というのも、書店で本だけを見て買ってくれる人って、本当の本好きなんですよね。でも立体的な環境だとか、こういう風に売っていきますよ! という裏話を加えることで、もっと多くの人にアピールができて本に興味を持ってもらえます」

 


↑動画生配信アプリ『SHOWROOM』を使って、会場に来られないファンにも呼びかける、はあちゅうさん。

 

念願の夢であった小説を出すことで、はあちゅうさんは今までにない作家のスタイルを作り出しました。そして、改めて気付いたことがあるそうです。

 

「やっぱり私はネットに強いというのが、今のところ自分の強みなので、新しいサービスはどんどん使っていこうと思います。実際に、BASE(注1)というオンラインショッピングサービスを使って、SHOWTIMEの生配信(注2)をしながら100冊売ったんです。

本を100冊売るって、これまでは時間も準備も必要で本当に大変だったんですけど、インターネットを使えば簡単に、家に居ながら100冊が売れちゃうんですね。こういう試みは大事で、自分の強みを販売に繋げるということを、本を書く以外にもやっていきたいです」

 

そして、この日のトークイベントはSHOWTIMEで生配信され、会場に来られない遠方の読者もスマホを通じて楽しんでいました。確かに、これまでの作家にはないはあちゅうさんのアプローチは、読者をより強く惹きつけるのかもしれません。

 

夢は映像化!

 

 

これまで、映像の原作を手がけたりもした、はあちゅうさん。「通りすがりのあなた」の映像化にも興味があるそうです。

 

「映像化は夢です。今までも映像の原作をさせていただいたことがあったんですけど、ちゃんとしたコンテンツとして、本を越えた動画が作られたことはなかったので、映像化はずっと夢ですね。

本という形でユーザーに思いを伝えることには限界があります。言語が違う国では翻訳しないと読んでもらえないし。でも、映像になれば見てくれる人の数の「ゼロ」がひとつ増えるので、一人でも多くの人に作品を届けたいと思います。だから、映像化は夢です」

 

はあちゅうさんの小説が映画やドラマになる日は、そう遠くないのかもしれません。

夢を叶えることに貪欲で、つねに満足はしないでさらなる夢を追い続けていく姿は、とても眩しく、羨ましくも感じます。

 

「嫉妬はエネルギーになります。羨ましいと思うということは、自分もあの人みたいになりたいと望んでいるということ」

 

トークイベントの最後に、はあちゅうさんはそんな言葉を述べていました。

子供の頃に叶えられなかった夢を大人になってちゃんと叶えている人に嫉妬する時、人はチャンスを迎えているのではないでしょうか? 羨ましさや後ろめたさは見て見ぬふりをするのではなく、「なりたい自分」を実現させるための大切な原動力になるはずです。

 

 

(注1)『BASE』とは、無料でネットショップが作成できるオンラインショップサービス。

(注2)『SHOWROOM』とは、誰でも生配信ができて、それをユーザーが無料で視聴できる仮想ライブ空間。はあちゅうさんは、基本的に毎朝8時から生配信中。

 

 

■【はあちゅう】働くアラサー女性のリアル! 結婚と出産、仕事について

■実はこんな「出会い」が身近にある! 見落としてませんか? 運命の人

■好きな人に思いを伝えられないのは、○○が原因

 

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